瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

受動喫煙対策は世界最低レベル 厚労省検討会が痛烈報告


  厚生労働省の有識者検討会は「喫煙と健康影響」に関する報告書(たばこ白
書)案をまとめた。日本の受動喫煙対策を「世界最低レベル」とし、「屋内の10
0%禁煙化を目指すべきだ」と提言している。白書をまとめるのは2001年以
来、15年ぶりで4回目。31日の検討会で了承を得て、正式に決まる。

  今回、白書として初めて、日本人での喫煙と病気の因果関係を、米国の評価
方法に準じて、「確実」「可能性あり」「不明」「無関係の可能性」の4段階で科学
的に判定した。受動喫煙では、肺がん、虚血性心疾患、脳卒中などを「確実」と
認定した。

  世界保健機関(WHO)による各国のたばこ対策7項目への評価では、日本
は「受動喫煙からの保護」「マスメディアキャンペーン」「広告、販売促進活動な
どの禁止要請」の3項目が「最低」で、G7諸国で最悪だったと報告した。

  世界の49カ国では、医療機関や大学・学校、飲食店、公共交通機関などの
公共の場で「屋内全面禁煙」とする法規制をしているが、日本は努力義務にと
どまり、「最低レベル」と判定されていることも紹介。受動喫煙対策で「わが国で
も喫煙室を設置することなく、屋内の100%禁煙化を目指すべきだ」とした。

  また、喫煙による日本人の年間死亡者は約13万人、受動喫煙では約1万5
千人と推計。医療費増加など、たばこの「負の影響」が年4・3兆円に対し、た
ばこ産業などへの「正の影響」は年2・8兆円で、「全体では負の影響が上回る
と示唆される」と指摘。「健康状態の改善まで含めた総合的評価が不可欠だ」
とした。

  厚労省は「東京オリンピック・パラリンピックを20年に控え、たばこ対策を強
化し、健康影響について普及・啓発していきたい」と話している。(寺崎省子)

■たばことの健康影響が「確実」な主な病気(「たばこ白書」案による)

【喫煙】

がん(肺、口腔(こうくう)・咽頭(いんとう)、食道、胃、肝、膵臓(すいぞう)な
ど)、循環器疾患(虚血性心疾患、脳卒中など)、呼吸器疾患(慢性閉塞(へい
そく)性肺疾患、結核死亡など)、早産、低出生体重・胎児発育遅延、乳幼児突
然死症候群(SIDS)、2型糖尿病、歯周病など

【受動喫煙】

肺がん、虚血性心疾患、脳卒中、小児のぜんそく、SIDSなど

【未成年の喫煙(喫煙開始が若いことによる)】

全死因死亡、がん死亡・罹患(りかん)、循環器疾患死亡

(朝日新聞 2016年8月31日)


トップへ
トップへ
戻る
戻る