瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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日本人でたばこを吸わない人が受動喫煙で肺がんを発症・死亡するリスク
は、受動喫煙がない人に比べて約1・3倍に上昇すると、国立がん研究センタ ーを中心とする研究班が31日、発表した。国内の9本の研究論文を統合解析 した。日本人で受動喫煙によるがんリスクが科学的に証明されたのは初めて。
1984〜2013年に発表された、喫煙者の夫がいる非喫煙者の妻らを主な
対象にした9本の論文を合わせて解析したところ、受動喫煙がある人はない人 に比べ、肺がんリスクは1・28倍上昇すると出た。統計学的に明確な差が出 た。
今回の成果を踏まえ、肺がんのリスク評価で受動喫煙は「ほぼ確実」から
「確実」に変更、がん予防の指針「日本人のためのがん予防法」では、他人の たばこの煙を「できるだけ避ける」から「避ける」に修正された。
国内では、肺がんで死亡する男性の7割、女性の2割が喫煙が原因と考えら
れている。喫煙者自身の肺がんリスクは男性4・4倍、女性2・8倍と高いが、喫 煙者の家族らの受動喫煙による肺がんリスクは、前回11年の評価では、個々 の論文で統計学的に明確に影響があるといえなかった。
受動喫煙防止には屋内の全面禁煙化が有効で、14年時点で世界の49カ
国が屋内の完全禁煙をしている。最近の五輪開催国では、ブラジル、ロシア、 英国、カナダのいずれも実施済みだ。
同センターの片野田耕太・がん登録統計室長は、「日本の禁煙対策は国際
的には最低レベル。公共の場の屋内全面禁煙や受動喫煙の防止策を加速さ せてほしい」と話す。(熊井洋美)
(朝日新聞 2016年8月31日)
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