瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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生活習慣病対策で始まった「メタボ健診」の効果を検証するため、厚生労働
省が約27億9千万円かけて導入したシステムについて、最大で入力データの 8割が活用されなかったことが会計検査院の調べで分かった。厚労省に改修を 求めた。改修にはさらに約2億円がかかるという。
システムは、メタボ健診で保健指導を受けた人とそうでない人との間で医療
費に差が出るかを調べるため、2009年4月に導入された。@メタボ健診を受 けた人の健診データを医療機関が入力A病気で受診した際のレセプト(診療報 酬明細書)を医療機関が入力B両データを厚労省が突き合わせて関連を分 析、という流れで作業する。
検査院が調べたところ、11年度は健診データ約2361万件に対し、突き合
わせができたのは19・0%、12年度は約2465万件の24・9%だった。
原因は、医療機関が入力する書式の不一致だった。例えば健康保険証の番
号をシステムの端末で入力する際、健診データは全角、レセプトは半角だった 場合、システムで暗号化されたIDが異なって同一人物と認定されず、データを 突き合わせられなかった。
厚労省は、システム設計段階で模擬データを使った検証しかせず、12年に
は突き合わせできるデータの少なさを把握しながら原因調査を速やかにしてい なかったことも分かった。
保険者別では、中小企業の従業員らが加入する全国健康保険協会では、両
年度に計約1044万件の健診データがあったが、1件も突き合わせができなか った。また、約1400組合あるほとんどの健康保険組合でも同様だった。
厚労省医療介護連携政策課保険システム高度化推進室は「データを有効に
活用できるよう約2億円をかけて改修を進めている」としている。(磯部征紀)
■只野寿太郎・佐賀大学名誉教授(医療情報学)の話 入力形式の違いがコン
ピューター上で別の文字と認識されるのは初歩的なこと。多額の税金を使うな らば設計段階で緻密(ちみつ)な計画を立て、実際のデータを使ったテストもす べきだった。厚労省とシステム業者と十分なすりあわせができていなかったの ではないか。今回のようなことが起き、メタボ健診への意識が下がらないか心 配だ。
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〈メタボ健診〉 40〜74歳を対象に2008年度に始まった特定健康診査。肥
満度や血液(脂質・血糖・肝機能)などを調べる。メタボリックシンドローム(内臓 脂肪症候群)を減らし、医療費抑制につなげる狙い。14年度までに約1257億 円の補助金が投入されている。
(朝日新聞 2015年9月5日)
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