瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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総務省の労働力調査で、アルバイトやパート、派遣社員などの非正社員の数
が、初めて2千万人を超えた。子育てを終えた女性や退職後に再び働く高齢者 が、非正社員の仕事に就くことが多いためだ。
大阪府の大手英会話学校に契約社員として勤める女性(30)は4年前、夫
の転勤を機に正社員の仕事を辞めた。転居先で仕事を探したが、契約社員の 仕事しか決まらなかった。
正社員と仕事は同じなのにボーナスはなく、収入は低い。将来の出産を考え
ると、育休のとりやすい正社員になりたいと思うものの、社内で正社員になる道 は「狭き門」。かといって、転職も簡単ではない。「いったん正社員を辞めると、 その後が本当にむずかしい」と女性は語る。
総務省が26日発表した11月の労働力調査によると、非正社員の数は1年
前よりも48万人増え、2012万人。さかのぼれる1984年以降で初めて2千万 人を超えた。一方、正社員数は29万人減った結果、役員をのぞく雇用者5294 万人に占める非正社員の割合は、前月を0・5ポイント上回り、38%に達した。
非正社員は女性に多く、全体の57%を占める。とりわけ女性の25〜34歳
が前年同月より9万人増え、35〜44歳が10万人多く、45〜54歳も11万人 上回った。「子育てが一段落した世代を中心に就業が伸びている」(総務省)た めだが、こうした人の多くが非正社員の仕事に就いたとみられる。
また、65歳以上の高齢者の非正社員も、男性で16万人、女性が10万人、
それぞれ増えた。定年退職後、高齢者が非正社員の仕事に就く構図が浮かび 上がる。
だが、給与水準が低い非正規ばかりが増えると、1人当たりの平均賃金は
伸びない。
厚労省が発表した11月の毎月勤労統計調査(速報)によると、基本給や残
業代などを合わせた現金給与総額は1・5%減の27万2726円と、9カ月ぶり のマイナスとなった。確報値の段階で上方修正される可能性があるものの、物 価の上昇分をのぞく実質賃金指数は11月が4・3%減と17カ月連続のマイナ ス。賃金の上昇が物価に追いつかない状態が続いている。
安倍政権は、好調な企業業績が賃上げにつながり、景気が拡大する「経済
の好循環」を掲げる。
しかし、「正社員と非正社員の格差が大きいままだと、人件費が安い非正社
員を企業が増やす動きはとまらず、1人あたりの賃金は上がらない」(エコノミス ト)。好循環の実現には、非正社員の待遇の底上げが必要となる。
(末崎毅、岡林佐和)
(朝日新聞 2014年12月27日)
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