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          瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)  
            心の病にかかるサラリーマンが増えている。大企業の社員約1600万人が 入る「健康保険組合」では、心の病の受診数が2011年度までの3年間で2割 増えた。仕事のストレスが原因となる病気が大半を占める。08年のリーマン・シ ョック後の景気低迷で「企業のリストラが進み、雇用不安が広がった」との指摘 が出ている。 
            厚生労働省がまとめた医療保険の利用状況調査から、働き手本人が心の 病で通院や入院した件数をもとに、朝日新聞が推計した。財政難に陥り解散す る健保組合が相次ぎ、全体の加入者数は年々減っているため、加入者1千人 あたりの受診件数で比較。現在の調査方法になった08年度以降を対象とし た。 
            心の病による受診件数はリーマン・ショックのあった08年度は1千人あたり 延べ235件だったが、3年後の11年度は同280件と19%増えている。 
            心の病以外の病気やけがも含めた受診件数は3年間で8%増え、心の病が 全体の倍以上のペースで増えていることがわかった。 
            11年度の心の病の内訳は、うつ病などの「気分障害」が54%で最も多かっ た。パニック障害などの「神経症性障害」と合わせて、長時間労働やストレスと 関係が深い病気が8割超を占める。 
            世代別では40代が33%と最多で、30代も3割を超えている。20代と50代 は10%台と少なく、働き盛りの年代で受診の多さが目立つ。 
            一方、中小企業の社員約2千万人が入る「協会けんぽ」加入者1千人あたり の受診件数も、比較できる09年度と比べ9%多かった。健保組合の方が増え た割合が大きいのは、中小より大企業の方が受診をうながす態勢が整っている ためとみられる。 
            精神障害による労災認定の件数は、10年度以降年間300件を超す高水準 が続いている。関西大の森岡孝二教授(企業社会論)は「リーマン後、正社員 の間でもリストラによる雇用不安が広がった。人が減るなかで多くの働き手が長 時間働き、過労とストレスが高まっている」とみている。 
           (牧内昇平) 
          (朝日新聞 2013年8月22日) 
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