瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

9640人、白血病労災基準超す 事故直後、年5ミリシーベル
ト 福島第一原発


  福島第一原発で事故から9カ月間の緊急作業時に働いた約2万人のうち、
白血病の労災認定基準「年5ミリシーベルト以上」の被曝(ひばく)をした人が約
1万人にのぼることが、東京電力が7月に確定した集計から分かった。作業員
の多くは労災基準を知らず、支援体制の整備が課題だ。

 ■1年以上後に発病で認定

  原発作業員は年50ミリ超、5年で100ミリ超を被曝すると働けなくなる。これ
とは別にがんの労災を認定する基準があり、白血病は年5ミリ以上被曝した人
が作業開始から1年過ぎた後に発病すれば認定される。原発事故後には胃が
んなどの労災基準もできた。

  東電の集計によると、福島第一原発で2011年3月11日の事故から同年1
2月末までに働いた1万9592人の累積被曝線量は平均12・18ミリで、約5割
にあたる9640人が5ミリ超の被曝をした。この人たちは白血病を発病すれば
労災認定される。今年6月末には累積で5ミリ超の被曝をした人は1万3667
人になった。今後も汚染水対策など被曝の恐れが高い作業が予定され、白血
病の「年5ミリ以上」の労災基準に該当する人は増え続けるとみられる。

  一方、福島第一原発で事故後に働いた人からがんの労災が申請されたの
は今のところ4件(いずれも認定するか調査中)。厚生労働省は「全員に労災基
準を知らせる仕組みがない」として、リーフレットの配布を検討するという。厚労
省や東電が無料で行うがん検診は「50ミリ超」の人に限られ、「5ミリ以上」の
人の約9割は対象外だ。

  被曝管理に詳しい阪南中央病院の村田三郎副院長は「国が本気で作業員を
守ろうとしているように見えない。廃炉を着実に進めるためにも、国の責任で健
康診断をするべきだ」と指摘する。

 (青木美希)

 ■がんの労災認定基準と福島第一原発作業員の該当人数(他のがんでも認
められる可能性がある)

◆病名
被曝量の基準(ミリシーベルト)
線量基準を確実に超える人数(2011年12月末時点)



◆白血病
年5以上(1年たって発病)
9640人

◆悪性リンパ腫
年25以上(目安)
868人

◆多発性骨髄腫
累積50以上(目安)
868人

◆胃がん、食道がん、結腸がん
累積100以上(5年たって発症)
172人

(朝日新聞 2013年8月5日)


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