瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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【辻外記子】腰痛の人は全国に推定で2800万人いることが、厚生労働省研
究班の調査でわかった。40〜60代の約4割が悩んでいた。関係学会は、一般 的な治療法ごとにお勧め度をまとめた。原因不明の腰痛では、安静よりも運動 が効果的で、1カ月以上続く痛みにはマッサージの効果ははっきりしなかった。 ストレスなど心理的な影響も腰痛の引き金になると認定した。
厚労省研究班(主任研究者=吉村典子・東大病院特任准教授)は東京や新
潟、広島など全国8カ所の住民約1万2千人分のデータを分析した。医師による 問診などで、「腰に痛みがある」「1カ月以内に1日以上痛みがあった」人の割 合は、60代が4割強でピークだった。40代、50代も4割前後で、70代以上は 下がる傾向があった。男女比は4対6だった。
痛み止め、温熱、マッサージ、腰の牽引(けんいん)……。様々な腰痛の治
療法、どれが本当に効くのか。日本整形外科学会と日本腰痛学会は、一般的 な治療法の信頼度を診療指針にまとめた。白土修・福島県立医科大教授(会 津医療センター準備室)らが、国内外の約200の論文を分析した。
腰痛は、背骨のがんや、腰椎(ようつい)骨折、椎間板(ついかんばん)ヘル
ニア、脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症などでも起こる。こうした病気が 疑われれば、すぐに画像検査をして、もとの病気を治す必要があるという。
一方、こうした病気がなく、原因不明の腰痛は全体の8割以上を占めるとい
う。指針では、こうした腰痛には、抗炎症薬や鎮痛薬などの「薬物療法」が強く 勧められた。3カ月以上痛みが続く慢性腰痛では、ストレッチやウオーキングな どの運動もお勧めだ。
また、腰痛にはストレスがよくないと判断された。うつ状態や仕事上の不満、
人間関係に悩みがあると、腰痛になったり、治りにくくなったりするとの論文に は十分な根拠があったという。このため、慢性腰痛では抗不安薬、抗うつ薬も 有効な治療薬に挙げられた。鎮痛薬などが効かず心理的な影響が疑われれ ば、整形外科医らが処方する。
一方で、安静は必ずしもよくないそうだ。日常生活を続けるほうが、痛みが軽
くなり、仕事を休む期間が短くなるという。マッサージや腰の牽引の効果ははっ きりした根拠がなかった。いずれも、指針作りの参考にした複数の論文で結論 が異なっていた。
白土さんは「多くが悩む腰痛の治療について、統一的な見解が必要だった。
正しい理解を広めてほしい」と話す。
(朝日新聞 2013年3月24日)
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