瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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印刷会社の従業員らが胆管がんになり、労災の請求が相次いでいる問題
で、厚生労働省の専門家検討会は14日、印刷機の洗浄剤に含まれる「1、2ジ クロロプロパン」「ジクロロメタン」が原因だと推定する報告書をまとめた。この結 果を受けて、厚労省は大阪の申請者16人を3月中に労災に認定する。胆管が んによる労災認定は初めて。
報告書は、医学的な検討の結果、胆管がんは印刷機のインクふき取り用の
洗浄剤に含まれる「1、2ジクロロプロパン」と「ジクロロメタン」に、長期間、高濃 度さらされることで発症する可能性があると結論づけた。
労災請求については、昨年、20〜40代の16人(7人死亡)が請求した大阪
市中央区の印刷会社「SANYO(サンヨー)―CYP(シーワィピー)」の分から検 討。胆管がんによる死亡者の99・1%は50歳以上なのに、SANYO社は平均 36歳で発症、平均37歳で亡くなっている事実をあげて、SANYO社での発症リ スクが男性平均の1200倍あると指摘した。
16人全員について、「1、2ジクロロプロパン」入りの洗浄剤を使い、これを3
年8カ月〜13年2カ月、150ppm(ppmは100万分の1)を超える高濃度で吸 い込んだことで「発症した蓋然(がいぜん)性が極めて高い」と判断した。
16人のほかに、SANYO社で働いていて今年2月に労災請求した1人も、認
定に向けて検討を進める。
労災には時効があり、死亡した場合、翌日から5年を過ぎていると認められ
ないことが一般的だった。しかし、胆管がんが認定されることはこれまで知られ ていなかったため、今回は3月15日から時効が進むようにする。このため、死 亡後5年が過ぎていても認定される可能性がある。
SANYO社以外で全国の47人(32人死亡)が労災を請求しており、検討会
で引き続き審議する。
検討会は昨年9月に発足し、認定についての考え方と、申請した一人一人
について個別に認定できるかどうか検討を進めてきた。
〈胆管がん〉 肝臓でつくられた胆汁を十二指腸まで運ぶ8センチ程度の胆管
にできる。目立たないため、発見が難しいとされる。熊谷信二・産業医科大准 教授(労働環境学)のグループがSANYO社で多発していることを突き止め、昨 年5月に学会で発表。その後、全国の印刷会社で同様の発症例があることが 分かった。
(朝日新聞 2013年3月14日)
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