瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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【多田敏男、佐藤純】福島第一原発で事故後に働いた作業員のうち、少なくと
も63人が放射線管理手帳に記入された被曝(ひばく)記録よりも実際には高い 放射線量を浴びていたことが厚生労働省の調査でわかった。同省は東京電力 や元請けに修正を指導したが、連絡がとれない人もいて14人分が今も修正で きていない。
2011年11月〜12年10月に働いた人を対象に業者に調査・報告させる形
で調べた。事故が起きた11年3月から8カ月間の調査は手つかずだ。事故直 後は原発構内の線量が高い上、ずさんな被曝管理が横行していたとみられ、 手帳の記録が誤ったまま放置されている作業員数はさらに膨らむとみられる。
線量計を鉛カバーで覆って働かせる「被曝隠し」が朝日新聞報道で発覚した
ことを受け、厚労省は昨年10月、線量計の未装着など19件の不適切事例を 確認したと発表。東電と元請け37社に対し、1回の作業ごとに測る「電子型線 量計」と長期間の累積を測る「バッジ型線量計」の併用が徹底された11年11 月以降について詳しい調査を指示した。その結果、ふたつの線量計の値の差 が20%以上あるのに手帳に低い方の値を記入された人が63人
見つかった。
厚労省は安全を優先して高い方を記入するのが当然だとして修正を指導。
修正幅が最も大きい人は月間の累積線量が1・95ミリシーベルト増えて6・35 ミリシーベルトになった。厚労省は「特殊な作業状況で測定にばらつきが出た 可能性がある」としている。
63人中、修正が終わったのは2月25日時点で49人。残る14人は会社を辞
めて連絡がとれないなどの理由で修正できず、誤った被曝記録のまま別の会 社に移って原発で働き、年間被曝限度を超えている恐れがある。
被曝管理では東電が2万人以上の記録について、一元管理する放射線影響
協会に提出していないことが発覚。電力各社は「手帳で確認しており影響はな い」としているが、手帳の記録が誤っている例が多数確認されたことで対応の 見直しを迫られる。
〈放射線管理手帳〉 電力会社などが原発や除染の現場で働く作業員一人
ひとりに発行する。勤め先の会社側が保管し、被曝線量や健康診断結果を記 入。退社すると作業員に戻され、別の会社に移っても累積被曝量がわかる。1 月末までの累計で約45万人に発行された。
(朝日新聞 2013年3月2日)
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