瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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厚生労働省は3月31日、新型の豚インフルエンザについて「最初の流行は
沈静化した」として第1波が事実上終息したとの見解を示した。再流行や新た な強毒性のウイルスの発生に備え、今回の水際での検疫対策やワクチン供給 などについて専門家が検証し、6月中に報告書をまとめる。この日開かれた新 型インフル対策総括会議では、強毒性の鳥インフルを想定した従来の計画に 基づき、政府が発生当初、検疫強化や学校の臨時休校をとった点について「や りすぎだったのでは」との懸念があることが紹介された。
厚労省の担当者は一連の対策について「できるだけ感染の波を後ろにずらし
て時間かせぎをし、死亡者を極力減らすのが目標だった」と説明。これに対し、 専門家からは「目標が達成できたのかではなく、その目標でよかったのか、プロ セスも検証しないといけない」との意見も出た。
ワクチン接種体制についても課題が残った。当初は供給不足が予想され、海
外2社から約9900万回分(健康な成人は1回接種)を輸入契約したが、接種 回数の変更や患者数の減少により必要性が薄れ、出荷されたのは約4千回分 にとどまった。ノバルティス社(スイス)の234万回分はこの日で有効期限切れ になり廃棄処分される。
グラクソ・スミスクライン社(英)と契約した7400万回分は約3割にあたる23
68万回分を解約することで合意。一方、国産ワクチンの接種者数は、23日現 在の推定で約2282万回分だった。
日本で患者が初めて発生したのは昨年5月。7月下旬から患者数が増え始
め、8月19日に「流行入り」を宣言。11月下旬にピークを迎えた後、昨年末か らは減り続け、今年も減少傾向が続いていた。
一方、日本の人口10万人あたりの死亡率は0.15。カナダ(1.32)、英国
(0.76)に比べて低かった。政府の諮問委員会委員長を務めた尾身茂・自治 医科大教授は「学級閉鎖を行った結果、感染者が学童に限定され地域に感染 が広がらなかったため」と指摘した。(北林晃治、熊井洋美)
(朝日新聞 2010年3月31日)
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