瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

新型インフル対策に企業も注視 中小は遅れも


  鳥インフルエンザウイルスの変異による「新型インフルエンザ」流行の懸念が
高まる中、「危機管理」を専門とするコンサルタント会社に、予防策や発生後の
行動計画立案などを依頼する企業が急増している。政府が夏に事業者向け対
策ガイドラインを公表したことが契機となったようだ。コンサル会社からは「体力
がある大企業の対策が進む一方で、中小企業は遅れている」と格差を指摘す
る声が出ている。

  「新型インフルエンザが大流行した場合、各企業で4割の従業員が欠勤す
る」

  東京都内で先月開かれた企業向けの新型インフルエンザ対策セミナー。講
師のコンサル会社研究員の説明を、出席した各企業の担当者らは熱心に書き
留めていた。200人収容の会場は立ち見も出るほど。会場に入りきらなかった
約400人が別室でモニターを視聴するほどの盛況ぶりだった。

  講師を派遣した三井住友海上グループのインターリスク総研(千代田区)は、
「新型インフルエンザ対策は人気講座。開くと常に超満員になる」と話す。

  同総研は平成18年度から新型インフルエンザ関連の相談業務を開始。昨年
度末までの2年間の依頼件数は計約20件だったが、今年度は1年間で約50
件(予定含む)と急増した。同様の業務を行っている損保ジャパンリスクマネジ
メント(新宿区)も、今年度は予定を含め昨年度の10倍近い約40件の依頼を
受けたという。

  依頼内容で増えたのは、厚生労働省が企業に策定を求めている大流行(パ
ンデミック)発生後の行動計画に関する相談業務。そこまで対策が進んでいな
い企業からも相談がある。マスクや消毒用品などの感染予防備品、各種備蓄
品の種類や数量に関するアドバイスを求める依頼が多いという。

  しかし、東京海上日動リスクコンサルティング(千代田区)は「対策に取り組ん
でいるのは大企業が中心」と、中小企業の対策の遅れを指摘する。

  例えば、大田区のコンピューター機器製造会社(従業員16人)の男性社長
は「対策にお金を使うくらいなら運転資金に回す。それどころじゃない」と、にべ
もない。

  しかし、新型インフルエンザが発生すれば、企業の規模にかかわりなく、事
業が壊滅的な状態に追い込まれる可能性がある。

 そのため、東京海上日動リスクコンサルティングのように「中小企業自身も起
こりうる事態をある程度は想定し、自社の態勢に当てはめて対策を考える作業
が必要」と、チェックリストが付いた対応マニュアルのひな型を無料で企業に配
布するところも現れた。

 厚生労働省は「企業が自社の継続を考えたとき、関係する会社すべてと連携
した対策を取らないと感染は防げない。大きい組織を通じて小さい組織にも対
策の輪が広まってほしい」と、企業の自助努力に期待している。
 
(産経新聞 2008年12月29日)


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