瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

アスベスト労災2167事業場を公表 厚労省


  肺がんなどの原因になるアスベスト(石綿)の健康被害をめぐり、厚生労働省
は28日、05〜06年度に新たに石綿による労災認定などを受けた従業員がい
た全国2167事業場の名称を公表した。石綿被害が注目されて労災申請が増
え、05年の前回公表数に比べ5.7倍に急増。被害が石綿メーカーや建設業
以外に広がる実態が浮き彫りになった。だが、公表が遅れ、前回公表した事業
場の新たな労災情報を公表しなかったことなど、情報公開に消極的な厚労省
の姿勢に批判が集まりそうだ。

  05〜06年度に労災認定や、石綿健康被害救済法(石綿新法)の対象となり
今回公表されたのは、2167の事業場名と事業場ごとの認定人数、石綿の使
用期間、作業内容など。認定人数の内訳は労災が1890人(うち死者993
人)、石綿新法は598人。

  厚労省が公表対象外としたうちの164事業場は、前回の05年に、04年度
以前の労災認定分、計383事業場名を公表したなかに含まれるというのが公
表しない理由だ。市民団体などからは「その後の労災認定のような周辺住民に
とって重要な情報がわからず、問題だ」と批判が集中。厚労省は「今回はあくま
で未公表の事業場名の公表が主眼」と説明していたが、同日再検討し、今後
公表することを決めた。

  公表された事業場を業種別にみると、石綿を含んだ建材を扱うことが多い建
設業が1178カ所で全体の54.4%。石綿製品のメーカーを含む製造業も761
カ所と、両業種で約9割を占める。

  製造業では、耐熱性や耐火性に優れた石綿部材を使うことが多い造船業が
159カ所と最多で、窯業・土石製品製造の89カ所、機械器具製造の75カ所が
続く。数は少ないが、百貨店や金融機関など意外な業種もあり、石綿を使った
建物の破損などにより被害が起きたとみられる。

  事業場数が急増したのは、05年に大手機械メーカーのクボタで大量の石綿
被害が発覚したのをきっかけに労災申請が増えたためだ。石綿による疾病は
潜伏期間が長く、元従業員や周辺住民で今後発症する人も多いと見られる。こ
のため市民団体などは、注意喚起につながる事業場名の早期公表を繰り返し
求めたが、厚労省は「緊急性が薄い」として公表を遅らせてきた。

  だが、石綿新法の特例による救済措置の申請期限が来年3月27日に迫っ
ていることや、厚労省の消極姿勢が国会でも問題になり、公表を決めた。公表
が遅れた理由について、厚労省は「急増した労災申請の処理を優先したため
で、企業に配慮したわけではない」と釈明した。

(朝日新聞 2008年3月29日)


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