瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

メタボ基準検証へ 厚労省研究班、2万4千人の腹囲分析


  生活習慣病を引き起こす原因ともされるメタボリック症候群の診断基準を見
直すため、全国2万4000人を対象とした大規模調査を厚生労働省の研究班
(主任研究者=門脇孝・東京大教授)が始める。「男性に厳しく、女性に甘い」と
いわれるウエストの数値を中心に、将来の心筋梗塞(こうそく)や脳卒中のリス
クを予測するのに最もふさわしい基準値をつくるのが狙いだ。

  現在のウエストの基準は、日本肥満学会が中心となってつくった。男性85セ
ンチ、女性90センチ以上。健康障害にかかわる内臓脂肪の面積に対応する値
として設定された。だが、心筋梗塞や脳卒中の発症との関係を直接調べている
わけではないため、医学的な信頼性を疑う専門家も少なくなかった。

  また、国際糖尿病連合が今年、「リスクのある人をより正しく見分けられる」と
して、日本人について「男性90センチ、女性80センチ」とする独自基準を決め
た。日本の基準とは男女が逆転しているが、国内の研究チームからもこれが最
適とする報告が出ている。ただ、調査人数は2500人程度にとどまる。

  茨城、大阪、福岡など全国7地域では、一般市民を対象にウエストを測り、そ
の後の健康状態を長く追跡して心筋梗塞などとの関係を直接調べている。厚労
省の研究班は、これらの研究をまとめて、ウエストの基準をどの値に設定すれ
ば、心筋梗塞や脳卒中につながりやすい人を最も効率的に見分けられるか、と
いった点を検討する。

  基準値を探る調査としては最大規模の研究になる。今のウエスト値は2度に
わたって検討されたが、いずれも調べた人数は1000人ほどだった。班のメン
バーには肥満、血圧、血糖、脂質の専門家らが参加。2年後をめどに、新しい
基準値をまとめる。

  健康保険法改正で、来年度から40〜74歳の全国民を対象に導入されるこ
とになった特定健診は当面、現行の基準でスタートする。ただ、ウエスト基準に
合致しない人を見落としたりしないよう、肥満度をみる別の基準も設けている。
門脇教授は「医学的根拠の高い基準値をつくるため、一定の質を保っている研
究だけを集めた。日本人の予防医学に役立てられるようにしたい」と話した。

  日本肥満学会の松澤佑次・理事長らは10月の記者会見で「当面はウエスト
値を変える予定はない」と表明。ただ、信頼性の高いデータが明らかになれ
ば、見直しは否定しないと述べている。

  《メタボリック症候群の診断基準》 腹部の内臓脂肪の面積100平方センチ
に相当するウエストの長さが男性85センチ、女性90センチとされる。これに加
えて、高血糖、高血圧、脂質異常のうち二つ以上当てはまる場合。

  ウエストの基準は、米国は男性102センチ、女性88センチ、欧州では男性9
4センチ、女性80センチで、いずれも身長と体重をもとに計算した体格指数(B
MI)に対応する値として決めている。

(朝日新聞 2007年11月8日)


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