瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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メタボリック症候群の診断基準作りに取り組む国際組織が、「男性85セン
チ、女性90センチ以上」とする日本のウエスト基準値と異なる「男性90センチ、 女性80センチ以上」という独自の日本人向け基準を決めた。心筋梗塞(こうそ く)などを起こすリスクのある人を正しく判別できるとの説明だが、日本の基準を 作った側は反発している。
この組織は国際糖尿病連合(IDF)。日本を含む約160の国・地域から糖尿
病にかかわる組織が参加している。
メタボリック症候群は放置すると糖尿病や心臓病などの生活習慣病につなが
りかねないとされ、ウエスト値は、主な指標として使われている。
ただし、日本人は太らなくても糖尿病になりやすいなど、生活習慣病の発症
には人種による違いがある。このため、IDFは主な地域や国ごとにウエスト値を 設定した基準を05年春に定めた。
このとき、日本人向けは日本の基準と同じ「男性85、女性90」だった。女性
の値が男性より大きいのは日本だけで、中国などアジアの「男性90、女性80」 とも違いが際だった。異論が出て、IDFは今春、新しい研究結果も踏まえて「男 性90、女性80」に改めた。
日本の基準作りに携わった松澤佑次・住友病院長によると、2月にIDF側か
ら改訂の打診があり、拒否したが押し切られたという。改訂の中心となった国 際糖尿病研究所(豪州)のポール・ジメット教授は「心臓病や糖尿病のリスクを 重視する観点から見直した。詳しいデータが集まるまでは、他のアジア諸国と 同様に考えたい」とする。
日本の基準は、腹部の内臓脂肪面積が100平方センチに相当するウエスト
値として「男性85、女性90」になった。ただ、この値には「決め方が厳密でな い」との指摘もあった。
松澤さんは「日本の予防医学のために作った基準なのに、海外から介入され
るいわれはない。ただ議論があるのも事実で、必要ならば再検討も考えたい」 と話す。
(朝日新聞 2007年6月17日)
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