瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

石綿の労災認定が急増 中皮腫倍増1千件突破


  労働現場でアスベスト(石綿)を吸った後、肺がんや中皮腫になったとして労
災認定を受けるケースが急増していることが、厚生労働省のまとめでわかっ
た。06年度は前年度と比べ、中皮腫が倍増して1000件を突破、肺がんは3
倍以上となった。05年夏にクボタ旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺での被害
が表面化してから関心が急激に高まり、労災保険の請求が急増。潜伏期間を
すぎて発症が増えている影響ともみられる。

  06年度に新たに労災認定されて保険支給が決まったのは肺がん790件、
中皮腫1006件の計1796件。決定が出た都道府県も前年より5増え、46都
道府県に及んだ。昨年度決定があった山梨県で今回無かったものの、全国に
広がっている。製造業と建設業で働いていて石綿を吸い込んだとみられる人が
大半で、両業種が9割以上を占めた。

  「石綿との関連が認められない」として不支給とされたのは肺がん272件、
中皮腫139件の計411件だった。

  請求は、肺がんは04年度の61件から05年度は約12倍の712件に急増
し、06年度も880件。中皮腫も04年度の149件から05年度は1084件にな
り、06年度も835件にのぼった。

  厚労省職業病認定対策室は「クボタの問題が大きく取り上げられて請求が増
えた。請求件数は今後も同じように推移するだろう」とみている。

  石綿が多用されたのは1960〜70年代。中皮腫は、石綿に接して30〜50
年後が発症のピークとされ、患者数も増えているとみられる。石綿による肺が
んも潜伏期間が15〜40年とされ、増加が予想されていた。

(朝日新聞 2007年6月3日)


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