瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
![]()
アスベスト(石綿)製品メーカーの従業員らの健康被害について、経済産業
省は15日、日本石綿協会など業界団体を通じて89社に調査したところ、石綿 が原因の病気による死者が27社で計374人に上っていることを明らかにし た。ほかに現在、88人が治療を受けているという。石綿との因果関係がはっき りしないじん肺の数も含まれている。直接雇用でない下請け労働者などの被害 は、ほとんど把握されていない。
今回調査した業界は、石綿を使った建材や水道管、ブレーキ材料などを製造
しており、被害が集中していると指摘されている。さらに、石綿製品を使ってい る造船、自動車、建設などの業界でも、被害を公表する動きになっている。
同省によると、死者のうちおもな疾患は、石綿に特有のがんの一種「中皮腫
(ちゅうひしゅ)」が114人、肺がんなどで106人、じん肺が154人。療養中の 人は中皮腫が13人、肺がんなどが22人、じん肺が53人だった。
死者数でみると、最も多かったのは、建材メーカー「ニチアス」(東京都港区)
で141人。次いで、機械メーカー「クボタ」(大阪市)が79人だった。
クボタが独自に公表した以外に、工場周辺の住民や従業員の家族に健康被
害の報告はなかった。
調査をまとめた経産省住宅産業窯業建材課は「これほど大きな被害が発生し
ていたとは予想できなかった。調査についても、もう少し早く取り組むべきだっ た」としている。
この問題を巡っては、6月、「クボタ」が旧神崎工場(兵庫県尼崎市)の従業
員ら79人が中皮腫などで死亡していた事実を公表。他の石綿製品メーカーが 相次いで、従業員らの健康被害の状況を明らかにした。
この動きを受け、経産省は今月初め、石綿製品の製造にかかわる六つの業
界団体を通じて、調査に乗り出した。
国土交通省も日本造船工業会など造船業界団体に対し、被害を調査するよ
う求めている。
(朝日新聞 2005年7月15日)
![]() |