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          瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)  
             喫煙者の煙を吸う受動喫煙は人体の免疫系統に影響を及ぼす、という研究 結果を、独立行政法人・産業医学総合研究所(川崎市)と筑波大学の研究グル ープが導き出した。グループは研究結果を基に、「職場の分煙化が非喫煙者の 病気予防に役立つ」と指摘する。 
             同研究所の中田光紀研究員(医学博士)らと筑波大・社会健康医学研究室 の谷川武・助教授のグループは、分煙されていない職場の男性社員675人の 協力を得て、喫煙や受動喫煙の有無について質問し、採血した血液成分との 関連を調べた。 
            受動喫煙は、「自分の席の近くで(家では同じ部屋で)喫煙する人がいるかど うか」の回答によって分類した。 
            (1)喫煙者(363人)(2)受動喫煙者(118人)(3)受動喫煙のない人(35 人)(4)過去に喫煙歴のある人(159人)――の4グループに 
             分け、免疫全体をつかさどるヘルパーTリンパ球(CD4+)の数を調べた。  
             その結果、受動喫煙のない人の場合、血液1立方ミリあたり平均425個だっ たのに対し、受動喫煙者は557個で、1.3倍。さらに喫煙者は756個で、1. 7倍だった。他のリンパ球や総白血球の数でも、喫煙度合いの高い人ほど数が 多い傾向が見られた。 
             ヘルパーTリンパ球は免疫反応の司令塔として生体防御の中心的役割をも つもので、外からのストレスが多いとそれに対抗して数が増える。 
             研究をまとめた中田研究員は「喫煙は動脈硬化を促進する強い因子として知 られている。今回の結果から、受動喫煙の機会が多いと、リンパ球系を介して 炎症や免疫反応が高まり、動脈硬化症の進展に影響する可能性がある」と説 明する。 
          (朝日新聞 2003年5月31日) 
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