瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
長引く不況の中、解雇や賃金不払いなどをめぐって起こされた労働関係の民
事訴訟が昨年は2321件と、前年に比べ202件増え、過去最多だったことが 最高裁行政局のまとめでわかった。賃金や退職金など、金銭をめぐるトラブル が大半を占め、労働条件の変更に関するものも増えている。
争点別にみると、賃金手当等が995件、退職金が445件で、合わせて全体
の6割を超えた。
労働訴訟を扱う裁判官によると、20日に大阪地裁で和解が成立した「武富
士サービス残業未払い賃金訴訟」のように、以前は少なかった時間外賃金(残 業代)を請求する事件も増加傾向にある、という。
残業代請求事件の増加について、最高裁行政局は「リストラによる人員削減
でサービス残業が増えていることや、労働者の権利意識の変化が要因ではな いか」と分析している。
解雇訴訟も361件と前年に比べ15件増加した。また、就業規則や労使慣
行の変更に関する紛争も目立つ。労働協約、労使慣行に関する訴訟は99、0 0年は1件もなかったが、01年は4件、02年には12件起きた。「不況の影響 が解雇という形だけでなく、従来の労働条件の一方的な切り下げという方向で 表れ始めた」と最高裁行政局はみている。
判決や和解で終了した労働訴訟の平均審理期間は12.0カ月と、統計を取
り始めた83年以来最短になった。
賃金・退職金の訴訟の7割超と、解雇訴訟の半分は1年以内に終わってい
る。その一方で、職場での差別に関する訴訟のうち1年以内に結論が出たケー スは8%で、3年以上が4割を超えた。
(朝日新聞 2003年2月24日)
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