瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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電気加熱炉や電気溶接など大電流を扱う職場で、一般環境より強い電磁波
(電磁界)が出ていることが、厚生労働省が進めている労働現場の電磁波調査 で明らかになった。電磁波が健康に与える影響はまだ実態が解明されていな いが、同省は今春にも最終報告書をまとめ、この結果をもとに規制指針の必要 性などを検討する。
調査は、社団法人「中央労働災害防止協会」の労働衛生調査分析センター
に委託。5年前から専門家の協力で進めている。
調査対象は電力、電気溶接、電気加熱炉、医療、鉄道の各業界。測定した
のは電力設備や電気機器などから出る電磁波(超低周波)。現場の社員らに小 型の磁界測定器を携帯してもらい、勤務時間中の暴露を調べた。
一般環境の電磁波強度は1日平均で0.1マイクロテスラ前後とされる。
調査結果によると、電力関係では発電機の巡回点検担当者は最高時で42
2マイクロテスラ。送電部門、変電部門は最高で100マイクロテスラ。配電部門 は最高で7.9マイクロテスラ。電気溶接関係では、橋や船舶の製造現場で10 0マイクロテスラを超える例が多く、最も高かった人は1240マイクロテスラあっ た。
労働現場の電磁波は一般環境よりはるかに強いと欧米の調査で指摘されて
きた。しかし国内には通信関係を除き、電磁波から人体を守る防護基準がな く、実態を示す具体的データもなかった。
厚生労働省・労働衛生課は「国際的な指針に比べて、暴露がどのような作業
でどのくらい高いのかが判明したら、低減の対策を取りたい」と話している。
世界保健機関(WHO)の協力機関の国際非電離放射線防護委員会(ICNI
RP)が98年、電磁波の健康への急性影響(神経系機能への影響)防止対策 として定めた国際指針は、一般公衆100マイクロテスラ、防護措置を取った職 業者500マイクロテスラとなっている。
(朝日新聞 2003年1月10日)
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