瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

メタボ腹囲は科学的根拠なし…線引き困難


  メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の適正な診断基準を検証してい
た厚生労働省研究班(主任研究者=門脇孝・東京大学教授)は9日、診断の
必須項目の腹囲の数値によって、心筋梗塞(こうそく)や脳梗塞の発症の危険性
を明確に判断できないとする大規模調査の結果をまとめた。

  現在の腹囲基準(男性85センチ以上、女性90センチ以上)の科学的根拠を
覆すもので、診断基準の見直しに影響しそうだ。

  現在の診断基準は、腹囲に加え、血糖、脂質、血圧の3項目のうち二つ以上
で異常があった場合、メタボと診断され、保健指導(積極的支援)の対象とな
る。しかし、他の先進国に比べ男性の腹囲基準は厳しすぎる、女性の基準は
逆に甘いと、批判されていた。

  研究班は、全国12か所の40〜74歳の男女約3万1000人について、心筋
梗塞、脳梗塞の発症と腹囲との関連を調べた。

  その結果、腹囲が大きくなるほど、発症の危険性は増加したが、特定の腹囲
を超えると危険性が急激に高まるという線引きは困難であることがわかった。

  現在の腹囲基準は、学会などが集めた小規模の研究データをもとに、腹囲
が基準を超えると、内臓脂肪が蓄積して、生活習慣病になりやすいという前提
で設定された。

  同研究班は昨年、腹囲が男性85センチ、女性80センチを超えると、血糖や
脂質などの検査データの異常が急激に増えるということを明らかにしたが、今
回の発症との関連では腹囲基準の妥当性は導きだせなかった。

  国際的には、腹囲を必須とせず、総合的にメタボを診断するのが主流。米国
では、腹囲(男性102センチ以上、女性88センチ以上)は中性脂肪、HDLコレ
ステロール、血圧、血糖値を含めた五つの診断基準の一項目に過ぎない。

  ただ、今回の研究でも肥満の人ほど発症しやすい傾向は変わりない。現行
の基準でメタボと診断された人は、そうでない人に比べて発症の危険性は男性
で1・44倍、女性で1・53倍高かった。

  門脇教授は「腹囲が大きくなるほど心臓病や脳卒中を起こす危険は男女とも
高くなったが、基準値としてどの数値が明確なのかを示すことは難しかった。今
回の研究結果をもとに今後、最適な腹囲の基準について議論をしていく必要が
ある」と話している。

(2010年2月9日 読売新聞)


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