瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

裁量労働下の過労自殺を労災認定


    労働時間を自由に決められる裁量労働制で働き、99年12月に自殺した神
奈川県の会社員、諏訪達徳さん(当時34)について、平塚労働基準監督署は
27日、「長時間労働でうつ状態になり自殺した」とする遺族の主張を認め、労
災と認定した。労働時間の確定が難しい裁量労働制のもとで「過労自殺」が労
災認定されるのは極めて珍しい。

  平塚労基署は、会社の最終退出者名簿や元同僚からの聞き取り調査から
「(労災と認定するに)相当な恒常的な長時間労働があったと推定できる」と判
断した。

  諏訪さんは神奈川県平塚市の大手建設機械メーカー、コマツに84年、研究
員として入社。14年間は主に機械設計部門にいたが、98年9月にレーザー開
発部門へ異動。ほぼ同時に「フリータイム制」と呼ばれる裁量労働制で働くよう
になった。

  遺族側によると、諏訪さんは上司から厳しい納期を設定され、サービス残業
を強いられる状態が続いた。亡くなる前の半年は、1日の勤務時間は10〜19
時間に及んだ。研究開発以外にも、部品購入や営業を担当し、顧客からの苦
情も受け付けていた。

  99年12月16、17日は午前3時前後まで残業し、週末をはさみ、20日朝、
出勤前に自殺した。

  遺族は「上司が無理な納期を設定し、本業以外の仕事も多くさせられた。自
分の裁量で仕事の時間配分を決めることはできなかった」として00年1月に労
災を申請していた。

  裁量労働制は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ一定時間働いたと
みなして、仕事の成果に基づいて給与を決める制度。厚生労働省は研究職な
ど「専門業務」に限って適用していたこの制度を00年からは「企画業務」にも広
げ、今後も拡大する方針だ。労働時間を自由に決められる半面、サービス残業
が広がることへの懸念が指摘されている。弁護士らからは「長時間労働の証明
がしづらく、過労死や過労自殺の認定が難しい」との声もある。

        ◇

  コマツ広報・IR部の話 社員の健康管理には十分留意してきたつもりだが、
労基署の判断を厳粛に受け止めたい。ただ、裁量労働制は一定の経験を積ん
だ社員に同意の上で適用しており、押しつけているわけではない。

(朝日新聞 2002年9月27日


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