瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

健診にみられた「死の四重奏」の頻度と臨床像に関する検討

論文要約

【目的】2001年4月から労災保険制度での二次健康診断等給付が始まった。そ
こで私達は定期健康診断で、「死の四重奏」の頻度および臨床像の検討を試み
た。

【対象と方法】2000年7月から2001年6月末までの、定期健康診断受検者全員
(1031名、男性1,006名、女性25名)を対象とした。血圧はSBP≧140 mmHgま
たはDBP≧90 mmHg、血中脂質はT.chol≧220 mg/dlまたはHDL-C<40 mg/
dlまたはTG≧150 mg/dl、血糖はFBS≧ 110 mg/dl、BMIは25 kg/u以上をもっ
て異常と判定した。これらの4条件をすべて満たすものを「死の四重奏」と判定
した。

【結果】「死の四重奏」の頻度は0.6%(1031例中6例)であった。「死の四重奏」
群(n=6)では年齢が52.0±6.5歳と、「死の四重奏」を認めない群(n=1,025)の
39.7±12.1歳に比し有意(p<0.01)に高かった。またγ-GTP値は「死の四重奏」
群で109.1±62.9 IU/lと、「死の四重奏」を認めない群の34.7±39.4 IU/lに比し
有意( p<0.001)に高値を示した。BMIは25.0から27.0 kg/uを示し、その増加は
比較的軽度であった。
 「死の四重奏」を示した6例中5例では心電図異常(左室肥大やST-T異常)、
または胸部レントゲン所見(心陰影拡大や大動脈弓の拡大・蛇行)を認めた。
「死の四重奏」群(n=6)では「死の四重奏」を認めない群(n=1,024)に比し、1日
当たりの飲酒量が有意(p<0.01)に多かった。

【結論】当工場の定期健康診断で、「死の四重奏」群の頻度は0.6%(6/1031)
と少なかったが、その6例中5例では心電図異常または心陰影拡大や大動脈弓
拡大・蛇行を認めた。また「死の四重奏」群では年齢が有意に高く、また1日当
たりの飲酒量が有意に多かった。以上より、「死の四重奏」群では二次健康診
断や保健指導が必要と考えられた。

(瀧本忠司、田邊 淳、大東正明 日本職業・災害医学会会誌 50: 264-269,
2002)


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