泥濘の15時間

長谷川恒男CUP 第12回日本山岳耐久レース

2002年10月10〜11日

奥多摩山岳71.5km

快晴
【写真・右より総合1位横山峰弘(CLUB KOCCi)、2位阿部真也氏、3位南官萬榮氏(日韓親善チーム)】
スタートまで

 数日前までは台風接近中で、開催を心配した人もいたようだが、秋の台風は進路が北東に変わると加速度がついてくる。たぶん9日中に台風は通過すると読んでいたが、果たしてその通りになった。しかし、準備をする大会本部の方々は台風の中でご苦労をされてのではないかと思う。どうにか開会式にたどりついた、そんな安堵感が大会役員の表情にも言葉にも見て取れるような会場だった。
 それにしても、参加者の数には驚いた。会場のグランドの埋まり具合が昨年以上だ。昨年より棄権者が多いだろうと予想し、その通りであったようだが、エントリー数が1900数十名と言うから元となるパイが大きかったわけだ。これも意外だった。というのは、パンフレットでは申込締め切り日が休日にあたっており、小生はその翌日に締め切り日を過ぎている本日の申し込みは受理されるかどうか問い合わせたのだが、その時の対応では「締め切り日を延期した」とのことだったのだ。さては申込者数が少ないのかなと思ったのだったが、私が思っていた目標エントリー数と、大会本部の念頭に置く目標エントリー数が異なっていただけのことだったのだろう。大会本部の目標数は2000名ほどだったのだろうか。集金目標は2000万円かな。
 出場者数は、1500名超、完走者は丁度1000名ほど。雨と道の悪さで過酷であったろうし、時間もかかるからタイムオーバーや棄権者も多くなったろうと思う。  小生は、仲間より一足早く会場へ。というのは、この日に発売された自著「実践!スポーツ中医学」(健康情報館刊)を会場に出店するアートスポーツで販売してもらうため、本を納品しなければならないからだ。内容は、中医学(中国漢方)にある未病先防の考え方を運動に活用すれば、もっと楽に安全に運動できるという内容で、小生のマラソン、山岳走、登山での経験を実例として挙げている。ただ、タイトルからではそんなことはわからないのでこの大会の参加者にアピールするとは思えないのだが、ちょっとでも印象に残ればと思い、重い思いをして本を運んだ。営業、営業……。
 今回は9月に呼びかけた試走会にまた一人新人が参加したりして顔なじみも増えた。穴澤さんがその人で40代優勝は無理でも3〜4位で競う実力はあると見たので、彼の活躍が楽しみだった。他の走友も調子が良さそうだし、かなり練習を積んでいると聞いていたので期待度が高まる。しかし、そんな中、肝心の本人が全然いかん。昨年12月発症の座骨神経痛が未だに残っており、33km程の距離で実施した9月の試走会でも25km過ぎてからはなんとか走っているという状態だった。そんな心配もあって締切ギリギリまで申し込みしなかったというわけだ。しかし、スタートラインに付いてしまえばグダグダ心配しても始まらない。突撃あるのみ。

 装備は、昨年とほぼ同様、ただし、シューズは雨続きでぬかっていることが予想されたため、過去はすべてランニング用のシューズだったが、今年はじめてトレイルラン用のシューズにした。見た中では最もぬかるみに強いかなと思われるソールパターンで、軽い方であり、水分吸収量も少なさそうなものを選んだ。ショップの解説では、昨年優勝の石川さんが履いていたモデルだそうである。雨具、防寒具兼用にスキー場で購入したポンチョ。ヘッドライトはLED8灯のものと4灯の物を各1つ。8灯を頭に、4灯を手にと思っていたが、4灯はまったく使わなかった。8灯は単4乾電池3本のもの。今年は例年になく長い間ライトを使用したが、電池交換は不要だった。なお、単4のリチウム電池を探したが見つからなく、使用したのはパナソニックのアルカリである。
 食物は、大型の豆大福2個、どらやき1個、カロリーメイト1箱分、食事のつなぎに飴20個。飲み物は、水1L、スポーツ飲料1L。これに月夜見峠で、ポカリスエット300CC程を補給。
 薬類は、麦味参顆粒(疲労回復薬)、胃腸薬(飲み過ぎ食べすぎ用)、葛根湯(冷えるタイプ向けかぜ薬)。以上各2包。いずれもエキス顆粒剤、正露丸。昨年は、健康食品の心沙棘1回分とされている5粒を持ち、これがよかったようだったのだが、今年は用意するのを忘れてしまった。靴擦れ用に、バンドエイド8枚。
 
 これだけ、持っていってどれだけ食べたり使用したかというと…。
 飲食物は、大福1口、飴7個、カロリーメイト全部、アミノ飲料1000cc、水800ccぐらい。やはり昨年同様相当の量が残った。それでもやっぱりシャリバテ時の惨めさを想像すると、つい余計に持ってしまう。手袋は持ったがアームカバーは持たなかった。手袋は結局使わなかった。昨年のレポートを読むと、「ヘッドライトが明るかったのでストックは不要だった」と書いている。にもかかわらずストックも持っていったのだから、なにをかいわんや。自分の研究さえ怠っていたようで、反省しているようで反省してないんだなあ。
 薬で使用したのは、六君子湯(胃腸薬)、麦味参顆粒(疲労回復薬)、葛根湯。数年前に下痢をしたときほどではなかったが、今回も腹が冷えてきてやはり消化の具合がおかしくなった。私の場合は、胃腸薬は必携のようである。かなり長く雨に降られ続け、冷えると下り(さらに加えて腹筋不足)のショックで腰が痛くなるのだが、これは防寒具の着用と葛根湯の服用でなんとかごまかせた。ただ、葛根湯を服用すると動悸が激しくなるようで、連服の危険を感じ1服だけにとどめた。

スタート
 さて、スタートである。昨年より力が数段落ちていることはよく自覚しているので、おとなしくいきましょうとおもうのだが、つい走ってしまう。それでも例年よりは抑えた。なるべくはあ、はあ言わないように、他の選手をなるべく抜かないようにと心がける。秋川はいつもの3倍くらいに川幅が広がり昨日通過した台風がもたらした雨が泥流となって流れている。天気は小さい粒の雨。標高1000メートルあたりからは雨になっているんじゃないかなと思う。
 今熊神社の階段。ここの印象では、やはり昨年より疲労を感じる。自分に迫力が感じられない。
 浅間峠までいつもなら抜かれるより抜く方が圧倒的に多いのだが、今回は拮抗している感じだ。
 気温が高くない割に汗は多いように感じられ、こまめに水分補給するように注意した。
 笹尾根に近づく頃から気温が下がり、やはり腹が冷えている。やたらにガスが出る。ちゃんと今朝排出したはずなのだが、まだしきれていなかったようだ。
 
中盤戦
 このレースでの自分の行く末を占う最初の区間が生藤山までということになるだろう。ここまでで疲労困憊するようなら、完走は望めそうもない。不調を感じるようだと辛いレースになる。ペース配分に注意が必要だ。何事もなく通過できるようなら大いに有望。小生は「不調を感じる」のレベル。やはり、三頭山の登りがきつかった。ストックをうまく利用できればいいのだけど、実は、ストックを登りで活用するには腕力が必要なのだ。腕立てや懸垂をしておくのだった。
 FUJIさんに抜かれ、続いて避難小屋で女子のMIKIちゃんに抜かれた。
 三頭山で役員から50代10位以内に入っていると言われ意外だった(後で調べたら7位だったようだ)。しかし、三頭山を下りながら、ペースをかなり落とさないと完走できそうもないように感じて随分ペースを落とした。鞘口峠あたりからは抜かれることが多くなった。
 10位以内と言われれば、元気があるならあと二人くらい抜いて入賞を目指そうということになるのだが、とてもそういう感じではなく、月夜見からは完走のために、極力体力を温存するため、走らされてしまうような下りの急坂以外は一切走るのを止めてしまった。あとは抜かれるばかりだが仕方がない。月夜見では60代2位になった青木さんに追いつかれた。
 雨は強くなり、月夜見からの名物の下りは滑り台のようだった。こういう坂は一歩一歩下るなんていうのではなく、一気に駆け下りることが唯一の滑らない方法だ。それはわかっているのだが足がふらついていては無理だ。でも途中1回のスリップで下れたのは、ストックとトレイルラン用のシューズのおかげだ。
 雨が強くヘッドライトの上からフードを被ったが、これでルートミスをしてしまった。フードで左右の視界が狭くなっているのと、ヘッドライトが目の前の雨粒を照らす為に地面がよく見えず、極端に視界が悪くなり、ルートが左に巻いていくところを真っ直ぐ小さなピークにに登ってしまった。ピークを越えて下り初めてから水に流された裸地に踏み跡が見られないことに気づきすぐ戻ったのだが、私に一人女性選手が付いてしまい、彼女もタイムロスさせてしまった。ロスしている間に青木さんが抜いていったんだと思う。
 御前山の登りはのんびりしたもんで、ここで朋友岩堀さんに抜かれる。以前やはりこの近くで抜かれ、その時は、小生は大ダワで棄権したのだが、本日はその予定はないので念のため「棄権はしねーよ」と宣言。今日は如何にゴールまで持たせるかがテーマになった。相変わらず腹の調子が本調子でなく、御前山手前のピークで奥多摩方面にちょっと入って緊急排泄。結構出た。やや調子が良くなったようだ。
 エネルギーの補給は少ないのだが、ゆっくり運動していると脂肪が燃えてくれるものだから案外運動が続く。御前山も大岳も登りはそんなに疲れなかった。ただし、下りがきつい。脚はいいのだが、腰に来る。座骨神経痛も腰に問題があるわけで、また再発するのではないかしらと、恐る恐るの下りだ。山岳レースに腹筋強化は重要です。
 長い長い御前山から大ダワへの下り。大ダワでは雨に打たれながらしばしの休憩。避難小屋ですればよかった。でも避難小屋で休んだら居心地が良くて寝ちゃったかもしれない。
 大岳も登るのはいいのだが、本来どんどんスピードをあげていくべき下ってからの平坦部で走りが続かずテクテクと歩く。長尾平のポイントで、これはシートの屋根の下でまた大休止。
 日の出山も登りはそんなにたいへんだとは思わなかった。
 もうこうなると欲も何もないので、残り10キロを夜の散歩だ。本当だったらボンボン飛ばせるところなのにねえ。

ゴール
 日の出山からは走りの倍以上の時間をかけてゴールした。さすがに、仲間の皆さんとは時間が離れていてみんなお休みだった。ただ松村君がカメラを構えてゴールを待ちかまえていてくれた。今年は途中経過の速報が会場になかったようで、いつゴールしてくるかわからんものをただひたすらに待っていてくれた松村君には、ありがたさと申し訳なさでいっぱいである。ありがとうございました。
 小生はてんで問題にならないが、わが仲間の成績たるや凄まじかった。
 初出場穴澤さん総合12位40代2位、富澤さん50代1位、若佐さん50代2位、FUJIさん50代5位、青木さん60代2位、河端さん女子40代2位。若葉グリーンメイト組は入賞ならなかったが、松村君30代10位、岩堀さん50代10位。いずれも年齢のハンデを考えると入賞はは至難だ。そして素晴らしい。小生は50代22位。これは全然素晴らしくない。すべての成績は、主催者のホームページで見ることができるので、いちいちここに書かない。
 河端さんは、日の出山の下りでルートミスのボーンヘッドで数十分タイムロスしてしまい優勝を逃した。本人もどうして赤ランプがついているのに間違えたんだろうと不思議がっている。実は自分も数年前の大会で、同じところで間違えたことがある。今回は小生が間違えたときの倍ぐらい道標が立ちランプが光っていたのに。ここはどうして間違えるかというと、矢印に眼をくれず道標の文字を読んでしまうからである。道標には左につるつる温泉、右方向に御岳山とある。御岳山は今来た方向だから、そちらへ行くと戻ってしまうじゃないかと考えてしまうのだ。素直に赤い矢印だけを見ればいいのだけど。矢先のとんがりが小さくて、文字を先に読んで潜入観念を作ってしまうと矢先への注意がなくなってしまうのだ。
 今回はチーム作りをしなかったのだが、このメンバーの上位3人でチームを作れば2位に入っていた。4〜6番の3人でチームを作っても入賞していた。7〜9番の3人のチームも他の2チームがなければ入賞のタイムである。来年はチーム作りもいいんじゃないかなと思う。
 試走会のとき見つけておいた会場近くの豆腐屋で地下60mからくみ上げた水を使用しているという豆腐を買ってきて舌鼓を打った。そのために、皿、箸はもとより、カツブシ、ショウガも用意してきたのだ。来年もあの豆腐を食べに行くぞ。待ってろよ。
 

2004/10/10〜11 記・えんのおづぬ

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