WEB詩集『昭和の森の子どもたち』





 「鎮守の森に、今日も優しい雨が降る」





あの日突然雨が降ってきたのでした。 森で雨宿りしました。  私のために傘をとりに帰ってくれて、すっかりびしょぬれになってしまったあなた。あの夏の輝いた一頁でした。




 あなたの部屋のカーテンをめくると
 煙草の香りとともに紫の蝶が一羽とび出した

 くぐもるようなランプを飛び越え宵闇の向こうへ
 ラヂヲのボリュームはそうね・・・そう、そのくらい 

 苦しくないようにそっと抱きしめてね
 まぶしくないようにもいちどカーテンは閉じて

 私の熱情から少し毒素が抜け
 軽やかな日向の匂いがふいに満ちた

 (仏壇への報告 供えた梨)
 (ちいさく鈴の音)

 夏のさなかの ちいさなできごと
 鎮守の森に 今日もやさしい雨が降る














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