WEB詩集『昭和の森の子どもたち』







 「永遠を撃ち抜く薔薇色のピストル」


         


 思い出の後ろ姿を追い続けるあなたが

 青ざめたトウスミトンボより哀しくて

 積乱雲のように

 とめどなく湧いてくる追憶のシーンは

 当事者のあなたよりも

 傍聴人の感受性を窒息死させるのだと

 泣き狂いながら壊れていきそうな「現在」の時間に

 少しあなたはうろたえた

 6月の海は無口な横顔

 空一面にかかる灰色の雲は、

 あなたが「永遠」にこだわりつづけることで色彩を失い

 掌からこぼれ落ちていく「現在」のやわらかいきらめきの数々を

 すっぽりと覆い隠して沈黙する

 そう、まるでヴィーナスの含み笑いのように



 涙の小壜をすっかりからっぽにしたあと

 海岸通りに車を留めて

 キスをしていたら空は晴れてきた



         



 モザイクの瞳を撃ち砕け

 33口径の小銃で

 きらびやかな音を立てて砕け散った氷片の中から

 たちのぼる薔薇色の陽炎こそが明日に咲く花びら



 ガラスの鍵盤を射抜いて

 微塵にこなごなに

 ステンドグラス越しに見ていた太陽が偽物だったことを 

 あなたに教えてあげるわ



         



 今宵

 月の光は

 どんな祝祭歌を歌うかしら












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