「二つの月 The Two moon junction

¨・¨∵:*:∵¨・.*.・¨∵:*:∵¨・¨

***




 君の頭上には

 まあるい黄色い二つの月が見えているはずだ

 君の思考が混濁しているからではない



 これは一つの臨界点がもたらした極限状況なのだ

 もちろん一つは幻影だ

 おぼろにかかった霧に投影された魔性の罠だ



 君の持つ手紙にはこう書いてあるはずだ

 「二つの道が楡の木の根元で別れるとき

  月の昇り来る方角へとまっすぐに進め」

 だから君は途方にくれている



 道はどちらを選んでも死には至らない

 一つを選べば記憶を少し失う代わりに怠惰な享楽が待っている

 一つを選べば試練を少し伴う代わりに知識の悦楽が待っている

 だが、一度進んでしまえば

 後戻りはできない



 二つの月が君を誘う

 だが、ここで夜明かしなどすると

 本当に魔物に取り込まれてしまう

 さあ、時は満ちた

 あとは君の選んだ道を進むだけだ



 ときどき季節の変わり目には

 こんな悪戯な出来事があるのだ

 それは、

 君が運命に試される瞬間かもしれない








***

¨・¨∵:*:∵¨・.*.・¨∵:*:∵¨・¨