「白い森」

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  僕はこのごろ森を歩くのが好きだ

  森の中で呼吸し

  風の匂いを嗅ぐ

  陽溜まりを横切る陰と闇

  暗がりを縫うように垣間みるまぶしい青空

  地面はいつも僕の秘密のように冷たく湿っている

  

  このごろ僕は気づいた

  人はみなそれぞれに大なり小なり心に森を持って生きている

  祖父は温帯気候の静謐な森

  父はツンドラの厳格な森

  母は熱帯雨林の昏迷の森

  僕はいったいどんな森だろう‥

  

  あの人はなつかしい陽なたぼっこの匂い

  野球場と砂場と体育館の裏手の記念樹の森

  時間のヴェ−ルに柔らかく包まれた

  静かなぬくもり

  僕の心も、ここに居続けたい

  小さな苗が枝を張り幹を広げ天を突く大樹に育つまで

  

  だけど現実、僕らは今日も都市空間を生きていく

  後悔の闇と、明日の輝きの織り成す

  複雑なだんだら模様を踏みしめ

  林立するビルの狭間で、

  注意深い草食動物のようにぴんと張りつめて

  かすかな未知の羽音に耳を澄ますのだ‥‥‥







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