「白い森」
¨・¨∵:*:∵¨・.*.・¨∵:*:∵¨・¨
***
僕はこのごろ森を歩くのが好きだ
森の中で呼吸し
風の匂いを嗅ぐ
陽溜まりを横切る陰と闇
暗がりを縫うように垣間みるまぶしい青空
地面はいつも僕の秘密のように冷たく湿っている
このごろ僕は気づいた
人はみなそれぞれに大なり小なり心に森を持って生きている
祖父は温帯気候の静謐な森
父はツンドラの厳格な森
母は熱帯雨林の昏迷の森
僕はいったいどんな森だろう‥
あの人はなつかしい陽なたぼっこの匂い
野球場と砂場と体育館の裏手の記念樹の森
時間のヴェ−ルに柔らかく包まれた
静かなぬくもり
僕の心も、ここに居続けたい
小さな苗が枝を張り幹を広げ天を突く大樹に育つまで
だけど現実、僕らは今日も都市空間を生きていく
後悔の闇と、明日の輝きの織り成す
複雑なだんだら模様を踏みしめ
林立するビルの狭間で、
注意深い草食動物のようにぴんと張りつめて
かすかな未知の羽音に耳を澄ますのだ‥‥‥
***
¨・¨∵:*:∵¨・.*.・¨∵:*:∵¨・¨