「心象ファイル vol.2」
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朝焼けいろの絹のカーテンを開けて
少年は花咲く園にやってくる
この不可思議な庭園には蜂蜜の貯めてある池がある
咲く花は白い薔薇、薄紅の山茶花、朱鷺色の椿
そして小高い丘には時を忘れた木苺が宝石のように輝く
少年は、白い薔薇にも山茶花にも椿にも目もくれず
木苺だけを摘み帰る
そして蜂蜜の池に一瓶の濃度の高い糖蜜を注ぎ入れ
蜂蜜を一瓶汲んで立ち去っていく
糖蜜が注ぎこまれることで
蜂蜜が薄まってしまわないか
などどいうことを案じる必要はおそらく少しもない
この庭園の標準時はいつも正午なのだから
ひっそり
薔薇の花びらを噛んでみる
林檎のようにせつなく
追憶のように甘いかおりに包まれ
蜜色の池のほとりに立つ
空は思い出の絵の具のように流れている
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