「水の国の龍の物語」
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森も湖ももって帰れないなら
夢はガラスの箱につめて
そっとはこびましょう
ここは龍の棲む湖
遠い遠い中国の
タクラマカン砂漠のその奥に
両の瞳から虹の光を吹き上げる
銀の鱗の龍がいた
大空をうねるように翔け
七色の雲をしたがえて
ときどき気紛れに雨を降らせては
この青い地球の上に 川を創り、池を創り、湖を創り
そうしてできた湖沼の底には
幾千年を経た龍の種族が今も棲むという
森も湖ももって帰れないから
虹はガラスの箱につめて
そっとはこびましょう
龍に気づかれぬうちに
森を越え、はるか湖面を渡る風
ゆらゆらと青い悲しみが二人を染め抜いて
過ぎていく時間の鼓動だけ、静かにかすかにこだまする
ほら深い水底を覗けば
ここには 私とあなたともう一つ はかり知れぬ未知のものの気配
森も湖ももって帰れないから
恋をガラスの箱につめて
そっと眠りましょう
銀の龍の夢に
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