「水色の幻想」
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静かな水の畔であなたの名を呼ぶ
石の橋を渡り終えると始まるポプラ並木に
いつも本を片手にしてあなたはそこに居た
肩を並べそっと歩く2人の後ろから
帰りを急ぐ自転車たちが追い越していく
好きな小説の名前は何故かいつも違っていたけど
いつもあなたのまなざしは未来を見つめていた
道が途切れ森が始まるその場所でいつも
2人は軽く微笑みを交わし家路へと分かれた
いつからだろう私があの場所に戻れなくなったのは
今も同じように空は青くて
ポプラの葉ずれは風の中で鳴り続けているの?
あの街を離れた季節が巡るたび
あなたの瞳と木々の青さと
湖水の呼ぶ昏さが私を苦しめる
そして、
いつも私は足をすくわれ
立ち止まるのだけれど
アスファルトの舗道は海綿質の魔性で
遡上への流れをゆるやかに吸い上げてしまう
いつものように再びこの季節が来るたび
花の散った乾いた街の錆びた流水路に
流れに乗って帰りつけない私のかけらが
しずく模様をかたどって白くとり残されている
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