「あまねくすべての想いに寄せて」

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 ここに街を築きましょうと砂漠の中で最初に叫んだ旅人は

 賢者だったのか聖者だったのかはわからないままに

 食用油の商人たちに踏みつけられたまま行き倒れて床に伏している

 策士たちの魂胆はやはり予測していたとおり

 奔流のように物資と情報を垂れ流す事で

 真実も金言もただの藻屑のように磨滅させる

 商人たちの手によって牧童や村民は飼いならされ

 風見鶏のような集会所を規則的に配置した

幾何学模様の街路が築かれていく



 旅人よ目覚めよ

 汝が力添えなくしてこの国の言葉の腐敗は止められぬ



 だが

 吟遊詩人の疲労と心痛は深く

 まだその双眸は閉じられたままだ



 せめて救援テントには露草の紫色の帆布を張れ

 看病するには賢者の泉の水

 そして真実の森からつんできた小枝の臥所



* * *


 村人よ病の癒えた彼の者とともに歩め

 砂漠の女神よ力を貸したまえ

 まもなく火を放たれかかっている数々の書物に

 宿るひとつひとつのわがいとおしき言霊を

 是が非でも救い出すために 


 
 光を

 闇を眩ませるほどの光をここに結集せよ

 善を

 悪をたじろがぜるほどの善をここに累積せよ



 羅針盤は

 南をさしている

 さあ

 行け

 星のためいきのごとくひそやかに





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