『ドラゴン ラース 物語』



エッブ城の城壁の眼下には、巨大な暗黒の地割れが走っている。
この地割れは、王国の凶悪犯罪者たちの処刑場所である。
処刑される罪人は、剣と1袋のゴールド、そしてときには盾を渡され、この地割れ、つまりドラゴン ラ−スの入口へと連れて行かれる。
その中に棲む齢500の巨大ドラゴンを倒すことができれば、罪人はドラゴンの宝を好きなだけ持ち出し、晴れて自由の身として王国を去ることが許された。

王国市場、このドラゴンとの対決から生還した人間はただ1人、それも辛うじてまだ息があるという状態での生還だった。
その男、ハーギス ボッグがよろよろと這い出してきた姿といえば、髪は焼け焦げ、片目はなくなり、手にはわずかひと握りのゴールドを握りしめているというありさまだった。
それでも、この男ハーギス ボッグは、ドラゴンを倒していたのだ。
入口付近で見つけた、4日前に孵化したばかりのひ弱なドラゴンの子を。

この慣習は、かつてカリーズ ノアニが帝国の属州に住む土着の民ドルーグとの連帯を世に示すために、ドル−グの祭主を残虐な方法で殺害した第10部隊の兵士の公開処刑として、このドラゴン ラースを処刑に用いたことから始まった。
ここでの処刑は、有罪判決に多少の疑問が残る場合にも、罪人に自由への一縷の望みを残してやることができるという理由から、後に歴代のエッブの王や女王たちに好んで用いられた。


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