『ドル−グの報い』



604年頃までには、ドル−グ第1民族評議会は、彼らの土地周辺を取り巻いたまま一向に立ち去る気配もないこの奇妙でやかましい異種族たちが、このままこの地に居座ろうとしているのではないかと疑い始めていた。
しかも、こうした異種族たちは次第にその数を増やしてきているようでもあり、またかなり頻繁に炎の断崖まで近づいてくるようにもなった。
どの種族も、さして価値もない商品の取引に躍起になっているようだったが、そのことを口にすると相手は激怒し、また調子を合わせれば合わせたで、その相手はまた舞い戻ってきてしまうのだった。

ドル−グはこれらの異種族同士が互いに反目しあっていることを知っていたため、評議会はこれを弱点として利用できないものかと考えた。
やがてドル−グは、外界の異種族たちに方針の変更を正式に発表し、武器と宝石の大オークションを開催して、最も高い値を付けた入札者のみに取引の権利を与えると宣言したのだ。

帝国のいくつかの貿易団とゴブリンの部族、そしてセックの代表団が、このオークションに参加するため炎の断崖に集まった。
もともと競合しあうこの異種族間の不安定なひとときの秩序は、競りにかけられるはずだった宝物がこのオークションに参加しているほかの種族によって盗まれてしまったため、オークション自体が開催できなくなったという知らせが、ドル−愚から各種族に個別に伝えられた時点で、あっけなく崩れ去ったのである。

この事件を発端に始まった小競り合いは、即座にエッブ全土へと広がり、ゴブリン、セック、そして第10部隊の間で2年にわたる消耗戦が続いた。
こうしてドル−グは、2〜3年という短い期間ながらも、この間見事に外界からの干渉を断つことに成功したものの、やがて守備の強固な第10部隊がエッブ全土で優位に立ち始め、その結果、今後の暴動に備えてますます体制を強化していったのだった。

ふたを開けてみれば、いつの間にか炎の断崖は帝国の領土にすっぽりと取り囲まれ、ドルーグにとって予想外の事態となっていた。
そしてさらに数年後、かつての陰謀の証拠が第10部隊によってついに明らかにされたとき、ドルーグは限られた自治権とともに自分達の土地に留まるために、代償として彼らの街を通る大街道を引き渡さなければならなくなったのである。


戻る