『ドルーグの歴史』


6世紀後半、グリーン山脈を越えるための迂回路を探していた帝国の貿易団は、炎の断崖に栄える大きな集落を驚きと共に発見した。

この断崖の土着住人であるドルーグ、ほかに類を見ない素晴らしい武器や宝石の数々を所有していたが、自給自足の生活を送ってきたドルーグにとって、自分たちの貴重な宝を帝国商人が差し出した冴えない品々と交換する必要などまったくなかった。

その後数年にわたり、多くの貿易団がドルーグの関心をひこうとしては失敗を繰り返したが、あるとき、ある貿易団が帝国の首都から持ち込んだ商品の中に、1枚のけばけばしい織物を見つけたドルー愚は、たちまちその入り組んだ複雑な模様のとりことなった。
そして、予想外の事の成り行きに呆然としている商人に、彼らは嬉々として精巧な武器をいくつも差し出したのだった。

この小さな隊商は一山儲ける夢を見ながら帝都へ戻り、さっそくドルーグとの次の取引のため、密かに何台もの荷馬車にいっぱいの織物を用意した。
しかし、帝都からドルーグのすむ炎の断崖までの730リーグもに及ぶ通商路は、しばしばゴブリンの襲撃に脅かされる油断のならない道のりでもあったのだ。

運悪くこの隊商はゴブリンの略奪を受け、しかもこの略奪品はドルーグの欲しがる品であることがゴブリンの知るところとなった。
ゴブリンは、その数世紀も前からドルーグとの取引交渉に失敗し続けていたため、一部の商売熱心なゴブリンは略奪品の価値をすぐに見抜いたのだった。

それから半年後、織物を満載した荷車を引いた小さなゴブリンの一団が、部隊の巡視隊の目を盗んで炎の断崖に到着した。
しかし、そこではすでにイータン ストーンブリッジと名のる商人がドルーグとの取引を一手に引き受けていた。
ドルーグは、ゴブリンが運んできた荷の価値を認めこそしたものの、ストーンブリッジと取引した後であったため、これ以上価値の品を取引に出す事を渋った。
結局、ゴブリンは価値があったはずの品々と引き換えに、わずかな数のかごや未完成のビーズ、そしてうち捨てられていた帝国の採掘道具などのガラクタを持ち帰る羽目になった。

ゴブリンはイータン ストーンブリッジの名を決して忘れなかった。
そして後年、報復に出るのである。


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