『フェドウィルの道』 第2巻


フェドウィルの道にはさまざまな自然の脅威が見られるが、人間も負けてはいない。
王国の民は、宝石採掘場の状態を改良するうちに、数多くの奇跡を自分達の力で実現させてきたのだった。
これらの奇跡の中でもとりわけ重要なのは、もともとエッブ城建築の際に地下の採掘に役立つよう、王国の初期の魔術師たちが作成した、巨大な魔法の掘削機であった。
また、ベルトと巻き上げ装置によって駆動するエレベータとコンベアも設置され、坑夫と資材が驚くべき速度で上下に移動できるようになっていた。
グレイシャーン方面から流れてくる雪解け水は、坑夫の飲み水にもなり、金と砂利のふるい分けにも使用された。

943年、採掘場は大爆発による悲劇に見舞われた。
引火性のガスが充満して連鎖的に爆発が起き、貴重な鉱脈の多くが大量の岩の下に埋もれてしまったため、それまでの掘削機がまるで役に立たないただのガラクタと化してしまったのである。
この大惨事以来、採掘場の坑内では魔法の力で動く換気扇による換気システムが導入されている。

多くの点において、大爆発以降の世代の坑夫たちは採掘技術の再考を余儀なくされた。
王国最大の富の源を求めて宝石採掘場を訪れる人々は、たいていキャンプ地のあまりの質素さに驚いた。
鍛冶屋、ラバ屋、コフィン ジャックの旅籠など、必要最低限の店や施設を除けば、常設の建物などほとんど見あたらなかった。

それから何十年もたつ今日でも、無骨な山岳民、坑夫、そして自称一匹狼が住むこの閉鎖的な共同体では、変化といえるほどの変化はほとんど見られない。
地層の中に輝く金脈が続く限り、そして税を納めた後に多少の酒代が残る限り、彼らもやはり、エッブ王国のごく満ち足りた民であるのだ。


戻る