イータン ストーンブリッジの生涯


イータン ストーンブリッジは生まれながらの商人だった。
貧困の中、帝国の首都イリヤラの路上で育ったストーンブリッジは、盗んだ卵やガラスの破片を元手になんとか温かい食事にありつきながら、少年時代の大半を過ごした。

第2部隊に職を得たごく短い期間に馬の売買に手を染めた彼は、たちまち取引の良し悪しを見分ける名人となったが、その冒険心の旺盛な性分ゆえに、単調で頭を使わない軍の生活にはどうしても馴染めず、596年には部隊での職に見切りをつけ、西方との商売を手がける小さな貿易団に加わった。

エッブに到着してまもなくドルーグに引き合わされたストーンブリッジは、このドルーグという種族は、他の商人達が買い付けようと躍起になっている風変わりな武器や宝石などよりも、さらに価値のある商品を握っていると確信する。
あるとき、彼らがとある不思議な物質を使って作業をしている姿をかいまみてしまったのだ。
それは、人の手のひらほどの厚さの卵の殻によく似た物質で、表面からは油を塗ったような光沢を放っていた。
ドルーグたちがそれを叩きつける様子からして、花崗岩よりも硬質な物であることは間違いなかった。
ストーンブリッジには、裕福な貴族の邸宅の床を飾るタイルとしてわずかな量を入手するだけでも、かなりの実入りが期待できそうに思えた。

幸運なことに、ドルーグたちはその物質には何の価値もないと考えており、むしろ処分できることを喜んでいた。
彼らにしてみれば、それまでは大事な武器や宝石との引き換えを前提に提示されてきた貴重な品々が、自分達にとっては不要なこの石ころと交換できるとあって、この取引を大いに喜んだのだった。

時間がたつにつれ、ドルーグたちはストーンブリッジとの取引にますます態度を軟化し、やがてついには、あらゆる他の商人たちには頑として断り続けてきた武器類についても、限られた数ではあったがストーンブリッジとだけは独占的に取引を行うようになった。
こうしてストーンブリッジは急速に富を増やし、後にドルーグから手ひどい報復を受ける頃には、エッブ中で最も裕福な市民の1人に成り上がっていたのである。


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