目も眩む銀色の光が収まって、九龍は今自分の居る場所が遺跡の外、墓地の片隅であることを確認した。墓守小屋の裏辺りであろうか。大騒ぎになっているであろう墓場の中でも、この辺りは比較的静かだ。 すぐ近くに真里野と白岐を見つけだし、九龍は口を開いた。 「真里野、白岐さん無事?」 「ええ」 「……どうやら」 九龍は返事に安堵の笑みをこぼし、視線を巡らせた。さして離れていない物陰に皆守と阿門らしい人影を見つけ、アサルトライフルの中から弾を抜く。深呼吸をひとつしてから腰を上げた。 「皆守」 呼ばれた声と近付く足音に、皆守はゆっくりと顔を上げる。声を聞いて我に帰ったと言ってもいい。 「あぁ、九ちゃ……」 言い終わる前に、皆守の頭を鈍い衝撃が走った。 痛い。アサルトライフルのストックで殴られたのだから当然である。 「なっ……」 何をするかと九龍を見上げれば、九龍は再びアサルトライフルを逆さに構えて振り下ろす。 「いやぁ、よかったなぁ2人とも無事で!嬉しいなぁ!」 避けるにしても、九龍は皆守が立つ隙を与えないから自ずと範囲が限られる。 「ちょ、九ちゃん待てって痛ぇ」 「逃げるな皆守、あと1発くらい殴らせろ」 九龍が何度目かに振り上げた腕を、後ろから止める者があった。 「師匠」 隻眼の剣士は静かに九龍を見据える。 「剣ちゃん、止めるのか」 九龍の言葉には答えず、真里野はおもむろに九龍の腕を取る手に力を入れた。 「師匠、持ち方がよくない。もっと脇を締めて手首を柔らかく、腰を落としてだな」 真里野は言葉少なに九龍の姿勢を修正し、頷いた。 「うむ、それでなるべく鈍角に当るよう振り下ろすがよい」 真里野の剣術指南・攻撃力120%付加。 九龍の口元になんとも言い難い笑みがこぼれてくる。皆守は諦めの吐息と共に、アロマパイプに火を付けた。 「じゃ、遠慮なく」 夜の墓場に、再び鈍い音が響く。學園の、平和の始まりであった。 −−−−−−−−
九龍だと、怒ったってこの程度です。えぇ。
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