「ここさ、現場は」友人のジョンが路上を指さした。「それ、本当の話し?」「勿論」彼
が話すには、ロシアンルーレットと言う違法のゲームで、出稼ぎのアルジェリア人が頭か
ら 血を流して路上に倒れているのを、目撃したと言う。ここは、マルセイユの裏通り、普
通一人では足を踏み入れない場所だが、地元の人間と一緒なので後から付いて来た。「随
分、物騒な話しだね」「彼等は何を考えているのか、わからないよ」ジョンが両手を広
げてかぶりを振る。6連発のピストルに1つだけ弾を充填し、ルーレットよろしくカラ
カラと回す。後は丁かはんかの要領で金を賭ける。当たれは掛け金が2倍、ディーラーは
、6分の1の確率で命を賭ける、随分バカげた話しだ。「彼等の文化も見捨てたもんじゃ
ないぜ、ちょっと待ってな」そう言い残して彼は店に飛び込んだ。「ホラ、食べてみな」
飴でからんだアルジェリア風ドーナツ。初めて口にする味にアラブ世界をかい間見る。