「ムゥ、何とすてきなファッションだ」私は、アヴィニョンで画材を買った後、リパブ
リック通りを歩いていた。人ごみの中、前方から近づいて来る黒人の女性のファッション
に 魅かれた。黒褐色の顔に、茶色の帽子、緑のワンピース、特に赤と緑のストライブの眼
鏡縁、同じストライブ帯の帽子が決まっている。体つきは、少し小太りでズングリ、決
してスマートとは言えない。気取る風でもなく自然体、どんな職種か知らないが、なぜ
こんな色彩が選べるのか興味が湧いた。自国の民族衣装の色彩、それとも自分自身の好
み何れにしろ、すばらしいハーモニーだ。一瞬の間に彼女は通り過ぎたが、振り返って
しばらく眺めていた。「しっかり信念を持って自己主張している。今の私はどうだろう
か、絵の上で自己主張が出来ているだろうか。色彩はこれ程、人を魅了する力を持って
いる。自分のハーモニを持たなければ」そう思いつつ又歩き始めた。