(106)出稼ぎ


             

「今度の日曜日ポーランド人が家に来るんだけど、トシオ達も来ないか?」「相変わらず
    フ ロニエ家は、交際範囲が広いね」「アンドレがヴァンダンジュ(葡萄狩り)の手伝いに行
    っ て、知り合いになった人達なの」「へえ、でもポーランド人は、余りここでは見ないよね
  」「今祖国は、インフレで大変らしいの、ギルとナターシャは教師、ポールは電気技師だ
  と言ってたわ」友人のクリスチアーヌが見せてくれた彼等の写真、30代のカップルだ。
  秋の葡萄狩りのシーズンになると、隣国のスペインやアルジェリアから短期の出稼ぎ労働
  者が、ここプロヴァンスにやって来る。夏のヴァカンス客とはまた違った人種だ。「彼等
  は、農家の納屋に寝泊りして、食事もままならないらしいわ。気の毒になってアンドレが招
  待したの。今年一度蜂蜜のおみやげを持って立ち寄ったわ、陽気でいい人達よ」「そうだ
  ろうね、積極的にフランスまで仕事にやって来るんだから」知らない国の人間、又興味が
  湧いて来た。
 

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 (107)アニエスのマフラー