(54)家族5人のプロヴァンス 3


「ママ、空がきれいだよ」「お絵かき、お絵かき」夕食後、健児・丈児の歓声。「みんな
、外に行くよ」ブドウ畑の横、コンクリートの土手の上で、夕陽の写生が始まる。ジンワ
リと尻に昼間の余熱、毎日の日課だ。一箱のクレパスを皆で使う。「いいね、丈児」「健
児も最高」子供の絵は、おもしろい。感動が中心に来る。ミストラルが残暑に心地よい。
プロヴァンスの感動が皆の心を一つにする。「さあ、これが終わったら蟻さんに行くよ」
バンの残り粕を持って蟻の巣村へ。「丈児、ヤメロ」蟻の巣を塞いでいる。小麦粉の様に
細かいブドウ畑の土。歴史が浸み込んでいる。トラックターのタイヤ痕、蟻がせっせとパ
ン屑を運ぶ。音のない行進。「次ぎはさくらんぼだ」木に残る完熟のさくらんぼ。「今日
は時間があるから特級の木で行こう」勝手にさくらんぼの等級を決めている。ふと見る壁
に等身大の紫の影。プロヴァンスの夕陽が熱い。アン・ドゥ、アン・ドゥ、一二、一二。

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(55) 再挑戦「また来るさプロヴァンス」