
(24) ロッシュ・ボン
セント・アグレーブ の郊外にロッシュ・ボンと言う鉛筆のように先の尖った岩山がある。
ジョン宅に滞在中よくこの岩山に行った。「自然の傑作ね」私はスケッチ、幸子は手紙を
書いて半日過ごした。街からは10キロ程離れていつもジョンに送り迎えを頼んだ。一度
突然雷雨に襲われた事がある。都会暮らしの多い我々には新鮮な出来事だった。近くの木
陰に雨宿りをして雨雲が通り過ぎるのを待つ、「ああ、我々は、日本から遠くにいるんだ
」急に心細くなって来た。この岩山の麓にマチーニと言う村がある。岩山のすぐ後ろにそ
の村が見える。5キロ程離れたこの距離感がスケッチをしていて問題だった。どうこれを
表現するか、セグレでスケッチをやっていて、いつも私につきまとった。水墨画のように
遠くを薄くするのか、距離感をなくして同じ面にもってくるのか。これは、自分捜しの第
一歩、私自身の決断力を養成する問題でもあった。
(25) サン・ジェニー