(20)ルシアンとの夕食


ジェガ宅に幸子と住み始めて、毎週火曜日画家のルシアンを夕食に招待した。プップー
、クラクションの音。「あっ、クリスチアーヌだ」毎週この日に7キロ離れたヴェイゾ
ンの街でマクシェ市場がある。買い出しの日だ。新鮮な材料でルシアンをもてなす。前
回の滞在の時ルシアン宅でお世話になったお礼だ。フランス語の勉強にもなった。ルシ
アンも食事を作るの手間がはぶけて喜んだ。私より一才年上、温厚冷静で、彼こそフラ
ンス人の中のフランス人と幸子や他の女性に受けがいい。夕食は9時に決めていたが3
0分は、遅れた。「何時に」という感覚が当地では当てはまらない。皆のんびりしてい
る。最初の日は、門の前の石垣に腰掛けて45分程幸子と二人で待った。麦藁帽子、首
に赤いスカーフ、夕陽に浮かぶルシアンの姿は、プロヴァンスの落ち着きそのもの。「
ボンジューサチコ」両ほほに挨拶のキス。「ボン・ナプテイーいいお食事を」

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