
6. 実践哲学 金子和宏
最近の科学技術の発展が著しく宇宙生活から海底生活まで十年前,二十年前は夢想だにしなかったことさえ,現実のものとなっています。このまま科学が進歩発展してゆけば人類の幸福に貢献するだろうと楽観的に考える反面,一方では公害がいたる所に生じて科学技術の進歩発展に悲壮的にならざるを得ません………。というようなことは本を見ればどこにでものっているようなことなので本会は Plastic なものでいこうと思って,つれづれなるままに………。
小生,大学生活を振り返ってみますと月日の経つのは早いもので,いつの間にか就職がきまり,来春はいよいよこの住み易き学園を追い出されることになりました。
この3年間で1年目は6畳のアパートで孤独な生活を過し,又パチンコ屋,カフェの往復でありました。2年目は麻雀ばかりして,やかましいと先輩から怒鳴られ,3年目は下宿でトランプに興じ,4年では先生やMさんの監視がつき毎日学校に行き勉学に励んでいると人はよく言います。
研究室には今学生が11人いますが,この中でいつのまにか彼女のいない渡辺,吉田(茂)両諸氏に小生を加えて3人が独身を守る横の会とやらに祭り上げられてしまい,現在他の者が色々と彼女のことを話す時だけ,3人は強い鉄の団結のもとに共同戦線をはることにしています。
小生,この学生時代カフェで学んだことをここでおさらいしょうかと思う。まず最初にプロポーズには潮時というものがある。だからやっと恋愛感情が芽ばえた時にすぐにプロポーズを切り出すと相手は感動して………までこぎつける。次にプロポーズには場所柄と時を考慮しなくてはいけない。のちのちまで二人の想い出にのこる大切なひとこまであるから,お互いしみじみと語り合うことのできる場所では興ざめであるから,おもいたったが吉日と電車の中などで切り出したら相手もかねて用意していた返事をつい口ごもるということなくすらすらと口に出してしまう。
いよいよ機熟してプロポーズにとりかかる時,慎重に考えなければならないのは切り出す言葉である。小生が一つ二つ千載一遇の晴れの場面で使う例をあげよう。
「夫婦善哉に一緒にでない?」とか。
「ぼくのマゴのおばあさんになる気ない?」というのが格調たかくて品のいい言葉である。
悪い例をあげるとまず前置きに男が「ぼくそろそろ身を固めようと思っているの――」といえば女はさりげなく「まあそれで相手はどなた」と大抵応じるだろうからそこで男は口に出さずグループサウンドのごとく耳に手をあて,片方の指先で相手を指すというようなことは気障で絶対してはいけない。
今まで述べたことは哲学であるから絶対厳守すること,こうしていると人生において間違いはないはずである。
では埃り高き開発土木科の諸君,大いにこれからハッスルしよう。