
30. ふるさと 宮本泰則
彼女を手に入れた時は,大学2年生の2月,雪の降る寒い寒い日でした。人の彼女を見受けしたぼくは15万円もぶんどられました。
それから,ぼくは彼女と毎日毎日デイトをするので彼女の食事代として1ヵ月7千円もかかります。ぼくのこづかいは彼女の食事代となり,ぼくがやせているのもこのためです。彼女がぼくとデイトするたびに,北九州の公害をうけ,顔がすすけている時もあります。ですから,時々,彼女に水をぶちかけて顔を 洗ってやります。その手を特別のクリームをぬりたくります。そうすると,彼女の顔がつやつやになりうれしそうです。
ぼくと彼女の仲をやいた友達が彼女の後姿を見て,尻がさがっているからブスだといいます。何をいわれようと15万円もかかって見受けした彼女,ぼくには最高にごきげんです。
ぼくは4月になると東京へ行ってしまいます。彼女をぼくの所に見受けしてはじめて彼女と離れるぼく,ふるさとをはじめてはなれるぼく,ぼくは複雑です。