
22. ふるさと 俵口博喜
古里の春は土臭い
れんげや菜の花に包まれ
暖かい太陽を一杯にうけ
きらきら
透明という宝石を浮かせた
小川のせせらぎ
新里のスモッグは
黒い煙突が
ブルーの空を呑み込み
灰色のデーモンのマントを吐き出した
マントの灰塵は
地球上に 末永く生きんとする学生服に
ボタン雪の様にひっついては
浸み込んでいき
小さい学生服は,皆
ぜんそくにかかり
大きくなった学生服は
肺に,
肺に黒いデーモンが巣くっていた。
だが,学生服は
デーモンにならず。
地球上の生物を,
夢みるふるさとを
取り戻さんと
煙突を倒しにかかる。