エスニック

岩石世界の昆虫たち



高山でひどい嵐に遭遇したとき、岩陰はしばしば唯一の非難場所を私たちに提供してくれますが、このような高山帯において、昆虫群集の最も興味ある自然劇は、やはり岩石社会と深く結びついています。 日当りにある岩石の表面を触れてみると、まわりの気温に比べて驚くほど暖かいことはよく体験することですが、こんな岩の上には、高山蝶やその幼虫たち、ハナアブやハエ類など多くの昆虫が太陽光線の吸収を求めて日光浴にやってきます。そして甲虫類や双翅類、あるいはクモ類などの捕食者はそんな獲物の狩り場として利用しています。 しかし高山帯の昆虫にとっては、私たちがほとんど目に触れる機会の少ない石下の社会こそ、最も好適で有利な生息場所となっているのです。そこでは、岩石のサイズ、被植の状態、石下の斜面や空洞の状態などに、さらにはそれらをとりまく微気象条件と深く関連して、実にさまざまな昆虫群集の生活が観察されます。 高山帯において、最も重要で基本的な昆虫調査方法として、”石おこし法”があげられるほどです。                             (保田 信紀)


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