エスニック

昆虫たちの垂直分布


私たちが高山へ登る時、山麓から山頂へと向っていくにつれ、周囲の自然環境が変化するのに気付きます。このように土地の高度から見た生物の分布を垂直分布といいます。大雪山において垂直分布を最も簡単に観察できるところは黒岳でしょう。 黒岳の植生帯は、層雲峡から高所へと、下部針広混交林帯、針葉樹林帯、上部針広混交林帯(移行帯)、ダケカンバ帯、そしてハイマツ帯へと変化していきますが、このような垂直分布は昆虫の世界にもみられます。たとえばウスバキチョウは高地の住人ですが、モンシロチョウは低地の定住者です。 最近の黒岳における甲虫群集の垂直分布調査から、植生帯と密接に関連して次のような大まかな3つの分布パターンのあることが観察されました(保田:1989)。
 1.全植生帯に広く分布する種
 2.上部針広混交林帯(移行帯)以上の高所に分布する種
 3.上部針広混交林帯(移行帯)以下の低地に分布する種
 大雪山は水平分布から見て、北米のアラスカ中央部あたりまでの類似の自然環境(気温要因)が垂直的に擬縮されているところなのです。        
                  (保田 信紀)


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