エスニック

夜の狩人−ダイセツオサムシ

キタキツネやノスリ、あるいはヒグマなどは大雪山の生態系における食物連鎖の頂点に立つものですが、高山帯の昆虫群集の中にもそのような関係が見られます。昆虫の世界において植物連鎖の頂点にくるものは、多くの場合は捕食性の種です。 大雪山の高山帯において、最も代表的な捕食者はダイセツオサムシです。全体が黒色をした体長2〜3cmの甲虫です。そして後翅は退化しており飛行できないので、移動はもっぱら足にたよっている歩行虫類です。本種は、高山風衝地、岩礫地のような植生もまばらな高山帯の中でも最も厳しい気象条件をもつ環境条件の所に限って生息しています。 昼間はほとんど石下に身を潜め、夜の訪れとともに殺りくの俳徊に出かけるのです。お花畑で安逸をむさぼる高山蝶の幼虫も、ダイセツオサムシにとっては単に丸々と太った御馳走にすぎないのかもしれません。 生物は群集内で互いに食うもの食われるものの関係で、バランスが保たれています。その証拠には、登山道を歩いていると、キタキツネの落し去った糞の中から、これら殺りく者の変わり果てた姿がしばしば観察されます。           
                   (保田 信紀)


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