空と文字(FIELD)

光りしずまるとカリゴケ



作家武田奉淳氏は作品「ひかりごけ」のなかで、「光かがやくのではなく、光しずまる。
光を外へまきちらすのではなく、光を内部へ吸いこもうとしているようです。」とヒカリ
ゴケが光る様子を表現しています。
 大雪山国立公園地域には、数百種類のコケ植物が生育していますが、この光る珍しいヒ
カリゴケも分布しています。
 登山道の岩陰の下の部分であまり乾燥もせず、また、湿り気もひどくないような場所が
あったら、腰をかがめて穴の中を日の位置を変えるようにしてのぞき込むと、「金縁の高
貴な織毯があらわれるのです。」これはヒカリゴケの胞子が発芽した原糸体と呼ばれる糸
状の構造物なのです。顕微鏡でなければ見られないほど小さく、たとえ取り出しても土が
掌にあるだけで何も見えません。この糸状の原糸体の一部が分化してレンズ状の細胞が形
成され、この細胞が光を反射して「ひかえめな」光を出しているのです。岩かげの下ばか
りでなく、強い風と倒れた木の株などにも原糸体が発育する場合もあります。このような
場所をよく採すと、植物体(配偶体)が生えていることがあります。 (佐々木 太一)

 



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